一般社団法人 放送人の会

放送人グランプリ2019(第18回)
―贈賞式2019年5月18日(土)千代田放送会館―


毎年度の放送番組の中から、「放送人の会」会員が推薦した番組を審査し、顕彰する。"放送人の放送人による放送人のための賞"。毎回、審査員と受賞者の心のこもった言葉の響き合いが参加者を感動させてきた。

【グランプリ】 北川 悦吏子(脚本家)
NHK連続テレビ小説(2018年度前期)「半分、青い。」の脚本の力を高く評価したい。
北川悦吏子さんは1990年代後半から2010年にかけて「あすなろ白書」や「ビューティフルライフ」などのヒット作を書き、<恋愛の名手>と呼ばれたが、難病と闘いながら執筆を続けた。
「半分、青い。」の中で、ヒロイン楡野鈴愛(永野芽郁)が、片方の耳が聞こえないという障害を持ちながら、雨の中、傘の音を聞きながら「空の半分には雨が降っていない。半分、青い。」というシーンには、作者自身の難病の体験が踏まえられている。
「半分、青い。」の世界は1971年~2011年までの40年間の時代を映し出した、優れた青春ドラマであり、作家、北川悦吏子の半生を投影した傑作であるとして、グランプリを贈りたい。
(講評担当:西村与志木)
【準グランプリ】 「ポツンと一軒家」ABCテレビ
衛星写真で見つけた山奥にポツンとある一軒家。どんな人が住み、どんな暮らしをしているのか。端的で明解なこの企画が、日曜日の20時台という目抜き通りで、多くの視聴者を惹き付けた。
一軒家に辿り着くまで、険しい山道を行くスリル、誰がそこに居るのか、不安と危険が一杯のサスペンス、地元の素朴な人情にも助けられ、優れたドラマを見る様である。
やっと出会えた一軒家の住人は、皆それぞれに人生の明暗を経てきたヒューマンストーリーを持っていた。なんの飾りもない生の声からその豊かなキャラクターが伝わってくる。奥深い山で、奥深い哲学、祖先からの系譜、市井の日本人が見える、なんとも奥深いドキュメントである。
限界集落、老いと病、孤独死…、背後にある厳しい現実を背負いながら、番組は、決して声高に叫ぶことも、押しつけがましさもなく、淡々と逞しく生きている住人たちを描出する。観る人に様々な想いと感動を起こさせる一級品である。
番組ⅯⅭの所ジョージ、林修とゲストのスタジオトーク、地味な現場の取材ディレクターをはじめとする全ての制作スタッフ・キャスト、その努力に拍手である。
(講評担当:佐々木彰)
【優秀賞】 「森本毅郎・スタンバイ!」TBSラジオ
1990年4月スタート以来30年、今も首都圏ラジオで放送し続けている、“朝番組の金字塔” です。
キャスターの森本毅郎さんの存在感、アシスタントの遠藤泰子さんの安心感、充実のコメンテーター陣、スタッフ全員のチームワークの良さが魅力です。聴取率も常に好調で、首都圏では毎回1位~3位を占めており、報道番組の手本となっています。
朝はラジオのゴールデンタイム。早朝の時間帯が好調であれば、その放送局を続けて聴くのがラジオです。
つまり、朝を制する局が聴取率の勝者となります。首都圏の聴取率調査で、17年以上、首位をキープするTBSラジオの、まさに原動力となっている番組です。
6時30分から8時30分まで、ニュースに真正面から向き合い、コメントは直球勝負。常に庶民感覚の目線を忘れない「聞く朝刊」です。取材の最前線で活躍する日替わりコメンテーターを森本さんが巧みにリードし、時の政権も厳しく批判し、ズバリとモノ申します。6時57分からの「朝刊読み比べ」は、森本さんが朝刊各紙を2分間で縦横ぶった斬り。朝から胸の奥がスッキリします。 7時からは、日替わりのコメンテーターによる、切れ味鋭い解説コーナー「ニュースズームアップ」。経験豊富なジャーナリストが、本物の情報とその見方を示してくれるので、自分の視点を持つ上で、聴いて得した気分になれる番組です。長きに渡りバランス感覚に優れた報道番組を放送し続ける功績を称えます。
(講評担当:三原 治)
【企画賞】 「チコちゃんに叱られる!」NHK
視聴者の好みも細分化され、もはや3世代揃って楽しめる番組は不可能かと誰もが思っていたところへ、突如現れた5さいの女の子チコちゃんは「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と日本国民を打擲し、目覚めさせてくれました。人形劇、着ぐるみというNHKの伝統にCGという最先端の技術を融合させ、懐かしくも新しい、視聴者に愛される番組を企画したことに対してーー。
5さいの女の子チコちゃんが、質問に答えられないと、「ボーっと生きてんじゃねーよ!」とオトナを叱る雑学バラエティ番組「チコちゃんに叱られる!」。5さいらしからぬ語彙力と巧みな表現力、可愛くもくせの強いチコちゃんに日本中が魅了されました。テレビから生まれた平成最後のスター・チコちゃんは瞬く間に人気者に。おかっぱの髪型やおませな口ぶりに、昭和の香りを感じさせながらも、CGを駆使してくるくる変わる表情に視聴者は驚かされました。緻密な取材力と遊び心満載の演出。その塩梅がちょうどよく、視聴者も「チコちゃんワールド」に引き込まれ、気がつけば誰もが5さいに、テレビと視聴者が共犯関係になる楽しさを、久々に思い出させてくれました。
知識を問うのではなく、日常の気づきを話題にすることで、小さな子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、3世代がファミリーで楽しめる番組です。
(講評担当:桧山珠美)
【奨励賞】 下村幸子(NHKエンタープライズEP)
BS1スペシャル「在宅死“死に際の医療”200日の記録」(NHK-BS1)などの優れた番組制作による。
医療費拡大に悩む政府は、患者の在宅治療を勧めるが、その背後には様々な課題が横たわっている。下村幸子(さちこ)さんは、人間の在宅死とその背景を探って一人カメラを回す。番組の中心は全盲の娘を一人残して死んでゆく老人と、森鴎外の孫のベテラン訪問医の話である。肺がん末期の父親の世話をするのは全盲の娘。医師はその娘に父親の病状については専ら語り、患者との会話はほとんど庭先の百目柿の熟し具合と季節の移ろいの話である。 
それが命の終焉を迎える微妙な感情を伝えて胸を打つ。下村さんは人間誰しも直面する死に際の医療の複雑な問題に、改めて丁重に光を当てた。
(講評担当:河野尚行)
【特別賞】 相田 洋(フリープロデューサー&ディレクター)
NHKの相田 洋(あいだ ゆたか)ディレクターが、独自の感性と野心とで南米移民船の同乗取材を試み、ドキュメンタリー番組『乗船名簿AR-29』で好評を得たのは1968年。以来相田氏は、10年毎に、移住者たちを現地に訪ね、新天地開拓に励む入植実態の紆余曲折を定点レポートして、注目されてきました。
その稀有な長期取材が満50年を迎え、今回『50年目の乗船名簿』4部作に集約されて、昨年末からNHK・Eテレで全4回を放送しました(12/29・1/5・1/26・2/2)。相田氏は、NHK在職中、旺盛な好奇心と精力的な制作手腕で、ヒューマン・ドキュメントから現代科学文明分析まで幅広い番組作りで活躍し、その特異な存在感で名を馳せましたが、中でもこの<乗船名簿>シリーズは、定年退職後20年余りも取材を継続する入魂ぶりで、文字通り氏のライフワークとなりました。
作品は、日本という国の半世紀の激動と切実に絡み合う庶民史の明暗を活写し、人間の営為や社会そのものへの感慨を呼び起こす大河ドキュメンタリーです。内容は目配り広く実証的で資料性も優れ、放送史上特記に価するユニークな成果の一つと言えます。相田氏は83歳。今なお衰えを知らない独立独歩の気概と記録への執念は、同輩・後進を問わず範となり、賞讃に価します。
(講評担当:鈴木典之)


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